2002年7月10日

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川遊びに明け暮れた夏休み
吉井川。確か小説か映画の題名にもなったこの川は、岡山県東部を北から南に流れ、瀬戸内海に注ぐ1級河川である。
夏の声を聞くと、この川が思い出される。昭和30年前後のこと。小学校高学年の頃だが、夏休み中この川で遊びまわったからだ。しかも、親戚の家(岡山市内ヶ原)に1ヶ月近くも泊まり込んで、家の手伝いからも解放され、大遊びするのだからたまらない。ワクワクしながら、夏休みを指折り数えた記憶がある。
午前中はゴロゴロして、早めに昼食を済ますと、一つ年上の従兄弟と「大川(大きな川なので、地元ではこう呼ぶ)へ行って来るでエ〜」と繰り出す。持ち物は六尺ふんどしとタオル、水中メガネ、テンゴ網。飲み水はどうだったか覚えていない。喉が渇くと、たぶん川の水を飲んだのであろう。
水はきれいで、色んな生き物がいた。川岸の河川敷には、竹やぶや畑があり、メジロやヒヨドリ、フクロウなどの鳥。チョンギースと呼んでいたキリギリス、バッタ、イナゴと遊び相手には事欠かない。川にはテナガエビ、カワムツ、鯉、フナ、ヤツメウナギ、アユなどが、漁をするほど群れていた。
その藪の向こうに、ワンドという池状の溜まりがあり、数艘の川舟が舫ってあった。ここが、一つの遊び場。藪の一画で着替えると、網を片手に舟からそーっと水中を覗く。護岸の捨石の間を注意深く見ると、テナガエビが見つかる。見えるのはヒゲだけだったりするが、それを追い出して取るのがコツ。エビは驚いて逃げる時は、必ず後ろに進む。この習性を利用して、網を後ろから少しずつ近づけ、最後にかぶせて取る。
子供にとっては、難しいが上の従兄弟が一緒の時は、収穫は10数匹にも。そんな日は、真っ赤に茹で上がったエビが夕食の食卓に載った。
エビ取りが終わると、ワンドの向こうに拡がる砂浜で水遊び。泳いだり、もぐったり、甲羅干ししたり。時には100メートルを超える本流を泳ぎ切って対岸に上陸。午後4時前後まで、そんな繰り返しを楽しんだ。
こんな毎日を夏休みの終わりまで続け、最後の2〜3日で宿題をやった。
今思うと、実にのどかな時代だった。人も、自然もやさしかった。数年前の夏、その川土手の道路を通ったが、川辺にはワンドも無く、水遊びする子供の姿も見えなかった。泳いで渡った川に橋が架かり、車が轟音を上げていた。
吉井川の一角にも、何かを得て、何かを失った現代社会の姿が映し出されていた。無性に寂しい思いが、脳裏をよぎったのを今も覚えている。
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